ダンゴムシ情報

身近な虫の観察記録

失敗シリーズ①ダンゴムシの飼育ケース

目次

急にダンゴムシの可愛さに目覚めた当ブログ管理人が「マジックポーション」という名前の超絶かわいいオカダンゴムシたちを飼い始めてから、約1年半が経ちました。

我が家の初代マジックポーション。かわいい。

最近はダンゴムシにとって良い飼育環境を作れていると思っていて、ダンゴムシだけでなく様々な虫(ワラジムシ・トビムシ・エンマムシなど)をぽいっと適当に飼育ケースに入れても中で元気に生きてくれるくらいですが、こうして安定した環境を作れるようになるまでにはたくさんの失敗を重ねてきました。

 

可哀想なことをしていたなという後悔があります。

ダンゴムシ以前に私が飼育した経験のある生物は、子供の頃に飼った金魚だけ。

生物への知識も経験も足りなさすぎた。

 

死なせてしまった個体への供養も込めて、オカダンゴムシ飼育で私が今までしてきた失敗について「失敗シリーズ」と名付けて少しずつ書いていきます。

この記事はダンゴムシ飼育上級者さんのご参考になる記事では無く、今まで虫飼育に縁が無く1から知りたいという向けのシリーズになると思います。

また、私にとっては失敗だった物・方法でもそれで上手く大切に飼われている方がいらっしゃることを存じており、これが正解ということはありません。

ダンゴムシを飼育したい方がより多くの情報を取り入れ、より良く飼育できるよう、一つの意見として私の出せる情報を全て書いていこうと思います。

 

失敗飼育ケース1『ガラスタッパー』(またはタッパー全般)

ダンゴムシを飼育しようと計画を立てた私が初めて選んだ飼育ケース、それは・・・バターケース(円形のガラスタッパー)でした。

妖精さんのようにかわいいマジックポーションを飼育することを決め、どうせならいかにもな虫かごよりもオシャレに飼育したいと思った私はバターケースに目をつけ、これの蓋に錐で穴を空けて飼育ケースにしました。

初めて作った飼育環境。貝殻と苔にやる気が窺える。

正直見た目は今でもかわいいと思いますがこのバターケース、何が良くないのかと言いますと・・・

失敗の理由①側面から写真を撮ると綺麗に撮れない。

上からの写真はダンゴムシを飼育してなくても外で簡単に撮れますし、個人的に飼育していて嬉しいのはダンゴムシを同じ目線の高さで観察しダンゴムシの顔がよく見える写真が撮れること。

ですが、バターケースに限らずケースの面が湾曲していると撮る角度によって歪んでしまうし反射もしやすく外から綺麗に写真が撮れないのです。

初めはかわいいと思っていた円形は、私にとってすぐにデメリットとなってしまいました。

バターケースの外から撮った写真。撮りづらい。

 

失敗の理由②円形の壁はダンゴムシのストレスになる可能性がある。

ダンゴムシには交代性転向反応という習性があります。これは右に曲がった後は左に、左に曲がった後は右に曲がるというものです。

(私も勘違いしていたことですが、ダンゴムシが障害物にぶつかり左右どちらかに方向転換した後、特に障害物にぶつからなくても逆の方向へ転換するようです。自由に方向を転換できないような狭い通路に入れた実験では障害物に反応して転向しているように見えます。)

円形のケースにダンゴムシを入れるとどうなるかというと、以下の図のように延々と壁にぶつかり続けグルグルしてしまう可能性があります。

「ダンゴムシに心はあるのか」内の図を参考に描きました。

このことに気づいたのは、動物心理学を研究されている森山徹先生の著書「ダンゴムシに心はあるのか」でダンゴムシを“周囲を水の堀で囲んだ円形の台“に乗せて交替性転向反応により延々と水に当たる状況にする実験について書かれていたからです。

飼育ケースの中には壁以外の障害物もありますし、実験とは全く状況が違います。

ただ、円形の壁は自然界にほとんど無い状況であることは間違いないですし、ダンゴムシの習性から壁に当たりやすくストレスになる可能性があるかもしれません。

 

失敗の理由③単純にサイズが小さく、高さも足りない。

温度・湿度・土の深さなど環境の好みに個体差があるため、狭くて居場所を選べないよりは大きなケースの中に差を作り各々好きな環境を選べることが大切だと思います。

そのため、ケースの高さは最低15cm以上、幅は20cm以上あると環境の差を作りやすいかなと思います。

これくらいの大きさがあれば冬場に暖房器具に近い場所と遠い場所の差も作りやすく、暑すぎたとしても逃げ場があるためダンゴムシ安心です。

また、私が見てきた中ではダンゴムシは土の深いところで脱皮をすることが多く、安心して脱皮できるようにするためにも土は厚く敷いてあげた方が良いです。

土の敷き方ですが、わざと傾斜をつけて敷き、高さによって湿度と温度に差を作ると良いようです。

一般に高い場所ほど湿度が低く暖かく、低い場所ほど湿度が高く涼しくなります。

人間にとっては感知できない差でも体の小さなダンゴムシにとってはこの僅かな差が大事なのでしょう。多分。

後は同じ場所にまとめて水苔を置き、いつもそこに霧吹きをかけることで湿度の高いエリアと低いエリアを作ったり、樹皮や木炭を置いて土以外の乾燥した地面を作る。(こういうものは下が良い隠れ家にもなります。)

心なしか体調の悪いダンゴムシは湿度を嫌って樹皮の上や枝の先など高い場所に来る気がしますので、湿度を保つのと同じくらい湿度の低い場所を作るのも大事な気がしています。

こうやってケース内に様々な環境を作ろうと凝りだしたらバターケースじゃ全然足りない!小さすぎる!となってしまいました。

 

失敗の理由④ガラスはプラスチックに比べて熱伝導率が高い。

熱伝導率の高さで以下のようなデメリットがあります。

・ケース内の温度が急激に変化しやすい。

・冬場に飼育ケースを暖房器具で暖めても暖かさが外に逃げやすい。

・ガラスが冷たいため飼育ケースの内側が結露し、空気中の湿度が奪われる。

・結露が撮影の邪魔になる。

結露しまくっている中、苔を食べているダンゴムシたち。

バターケースで初めてダンゴムシを飼い始めた時は冬場だったのですが、なかなか中の空気の温度が上がらないのに置き型のヒーターが接触しているケース底面は熱伝導率の高さ故に熱いという・・・今思えばとてもかわいそうな環境でした・・・。(置き型のヒーターもお勧めしないです。)

全面ガラス張りの家に自分が住みたいかどうかを考えたらなんとなく『夏は暑そうだし冬は冷えそうで嫌だな』って分かるので、まず自分に置き換えて考えてみるのが大事なのかもしれません・・・。

暖まりにくい環境なのに、さらに真冬に誤ってエアコンを消して寝てしまって朝起きたら温度が15℃を下回っていた時さえありました。よく生きててくれた・・・。

オカダンゴムシの適温は22℃〜28℃くらいです。4〜5月くらいの「人間が快適に過ごせる気温」がダンゴムシにとってもちょうど良いと考えて良いでしょう。

気温差で結露することを防ぐためにも我が家は一年中エアコンを稼働させ適温を保っています。

 

失敗の理由⑤タッパーは通気性が悪く蒸れやすい。

バターケースに限ったことでは無いのですが、タッパー全般が密閉するための容器なので・・・とても通気性が悪いです。(当たり前!)

もちろん、少しの隙間からも脱出してしまうような生物(ナメクジやダニなど)を飼育する場合には蓋に微細な穴を空けたタッパーは優れものです。

が、ダンゴムシはツルツルの壁面を登ることはできないため脱走を気にする必要はありません。

通気性が悪いとカビが大繁殖しやすいだけでなく、ダンゴムシはとても蒸れに弱いため、乾燥と同じくらい蒸れにも気をつける必要があります。

 

そこで『バターケースは蒸れるし閉塞感があって可哀想だから野外のように開放感のある感じで飼いたい』と思い、次にガラス水槽を飼育ケースにしたのですが・・・

失敗飼育ケース2『水槽』

2回目に作った飼育環境。開放感はバッチリだ。

これがどうなったかと言いますと、環境を作って1ヶ月程度でコバエが湧きまくりました。

半分程度の蓋しか無いガラス水槽にコバエが入り込むのはもちろんです・・・。

 

ここまで極端な例で無くとも、空気穴程度の小さな穴や少しの隙間であっても土が大好きなキノコバエは無理やり体をねじ込んで入り込み卵を産んでしまいます。

一度に60〜80個ほどの卵を産みますから、1匹でも侵入を許したらやがて飼育ケースは「無限キノコバエ製造所」となり果てあなたが心穏やかに過ごせる日々は終わります。コバエをくっつける粘着トラップを設置すると粘着面がコバエで真っ黒になりますがそれも焼石に水。すぐに飼育環境の作り直しを余儀なくされます。

カブトムシやクワガタのように体が大きい虫ならば飼育環境の作り直しもまだいくらか楽でしょうが、小さなダンゴムシを移動させるのは手間がかかりますから、コバエの侵入は絶対避けたい。

 

隙間を無くしつつかつ通気性を良くする方法・・・それは1つしかありません。

不織布です。

程よく蓋に隙間の空いた通気性の良い虫かごを買い、本体と蓋の間に不織布を噛ませると良いでしょう。

 

でもそれって毎日蓋を開け閉めするのにいちいち不織布を噛ませるのがだんだん面倒くさくなってくる・・・何か良いケースは無いものか、と探していた私が出会った飼育ケースがこちらです。↓

オススメは『コバエシャッター』

現在の飼育環境。コバエシャッター最高。

ダンゴムシ飼育に使っているオススメはこの【中】サイズ。

 

コバエシャッターの蓋

このように蓋の空気穴の上に不織布の小さな蓋をセットできるのが特徴の飼育ケース。

名前の通りコバエが入る隙間はありません。不織布は簡単に取り替え可能です。

昨年の真冬、季節的に大丈夫かと油断してこの不織布の蓋を外していたらすぐにコバエが侵入しました。コバエ憎い。

 

【小】はコンパクトでかわいい。

とっつきやすいので最初はこれも良いと思います。

 

最近何を張り切ったのか【大】を買ってしまいました。

でかい。ハムスターでも飼えそうなサイズです。

サイズ展開が豊富でこのほか【ミニ】【タイニー】があるみたいです。用途に合わせて選べるのが良いですね。【大】以外は別売りで専用のセパレータもあり、ケース内を区切ることもできます。

 

『クリアースライダー』とどっちがいいの?

コバエシャッターの名前は以前からうっすら知ってはいて、どうやら虫飼育においてオススメの飼育ケースといえば「コバエシャッター」か「クリアスライダー」があげられるようです。

クリアースライダーに付いては購入したことが無いので何とも言えませんが、蓋がスライドできる点は飛ぶ虫や素早い虫の飼育では本当に助かるのでは無いかと思います。

空気穴からはコバエが入ったりダニが出てきたりしやすそうなので、こまめなお掃除は必要だと思います。体の大きな虫を1匹で飼うなどの場合には良いと思います。

 

ダンゴムシ飼育においては私は隙間が無く且つ不織布で通気性も確保してくれるコバエシャッターに本当に助かっていて、サイズ違いで5個持っているくらいに大好きです♪

 

コバエシャッターのデメリットは?

あえてデメリットを挙げるとするなら価格が安くない点と、プラスチックなのでガラスより傷つきやすい点でしょうか。

誤ってピンセットで引っ掻いてしまったりして傷がつくと修復不可能です。

以前、傷がついてしまったケース本体を修復できないものかとメラミンスポンジやら耐水ペーパーやらアクリサンデーやらを使って悪戦苦闘してみましたが、逆に細かい傷が増え元の透明感を損なう悲しい結果になりまして・・・。

この方法でプラスチック(スチロール樹脂)の透明度復活するよ!というのをご存知の方がいましたらぜひ教えていただきたいです・・・。

 

そのため先日ダイソーで虫かごを見かけて『コバエシャッターは高いからダメにしちゃうと悲しいし、これでも良いかなぁ・・・』なんて検討していたのですが、ダイソーの虫かごはケース本体に細かい縦筋が走っていて透明度が高くありませんでした。製造上できる筋なのでしょうか。これではとてもケースの外から撮影できそうにありませんでしたので安価に済ませる夢は諦めました。

これからもコバエシャッターの優秀さに感謝しつつダンゴムシと暮らします。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

【参考文献】

森山 徹『ダンゴムシに心はあるのか』

 

【参考記事】

徳留アクア工房『外国産ダンゴムシ&外国産ワラジムシを飼育してみよう!』

https://e-book.aoi-amagaeru.com/?p=1880

創建ペイント『ガラスの熱伝導率とは?結露の原因?納得解説と対処法まとめ』

https://www.k-skn.com/sokenpaint/column/457/