ダンゴムシ情報

身近な虫の観察記録

失敗シリーズ②ダンゴムシの保温器具

この「失敗シリーズ」ではダンゴムシ飼育で私がしてきた失敗と改善方法についてご紹介しますが、私にとって失敗だと思った物・方法を使って上手く大切に飼われている方がいらっしゃることを存じております。

一つの意見としてこの記事がお役に立てれば幸いです。

 

失敗保温器具『パネルヒーター』

パネルヒーター

シートヒーターとも呼ばれ、ケース下に敷いて使用する保温器具。私が初めてダンゴムシ飼育を始めた時は真冬だったので取り急ぎ購入したのがこのパネルヒーターでした。

安価で、場所を取らずに手軽に設置できる点はメリットなのですがこのパネルヒーター何が良くなかったかと言いますと・・・

 

失敗の理由①飼育ケースが複数あるならお金がかかる。

接触させる方式の保温器具ゆえに、複数の飼育ケースを暖めたい場合はパネルヒーターがいくつも必要になると思います。配線がゴチャゴチャしますしお金もかかります。

失敗の理由②局所的な高温

ヒーターが接触している部分が局所的に高温になります。

爬虫類など局所的に温かいエリアが欲しい生物には良いのかもしれませんが、ダンゴムシは高温に弱いため危険です。

また、ダンゴムシの飼育ケースはコバエが繁殖しやすいため隙間を無くすことが絶対です。且つダンゴムシは湿度は高めに保つ必要があるため、ケース内は蒸れやすい環境です。

ダンゴムシは蒸れにも弱いため蒸れに気をつける必要があるのですが、このパネルヒーターが接触している部分はかなり蒸れてしまいます。

また、蒸れと同時に結露もします。結露は撮影の邪魔になるだけでなく、水滴に変わった分の湿度が奪われていることになるため、これもダンゴムシにとって良くないです。

パネルヒーターを敷いてある左下が蒸れて魔のエリアとなっている様子。
ダンゴムシはここに寄りつかない。何のために敷いているのか。

 

失敗の理由③全体はほとんど暖まらない。

パネルヒーターが生体にとって熱すぎた時に逃げ場を作るため底面全面に接触させないよう取り扱い説明書に書かれています。その通りにケースの半分くらいが接するようにして置いておくと、全体的にはほとんど気温が上がりません。

私が使用していたときはケース内の地上の気温は使用前と比べて1℃ほどしか上がりませんでした。

みどり商会の『ピタリ適温プラス』とビバリアの『マルチパネルヒーター』を持っていますが、全体の暖まりにくさはほぼ同じです。

周囲を断熱素材で囲ってあげてもほとんど変わりませんでした。

(そもそもダンゴムシを想定していない商品だと思いますし、商品を貶める意図はございません。)

 

基本はエアコン

保温器具は補助的な物でしかなく、基本的に「エアコン年中無休フル稼働」が一番シンプルで蒸れる恐れも無い温度調節方法です。どの道、夏はエアコンの冷房以外に適温を保つ方法はありません。

エアコンの風が直接当たらない場所に飼育ケースを置くようにしましょう。

虫のためにエアコンフル稼働なんて初めは私も想像していなかったことですが、光熱費なんてダンゴムシの可愛さの前ではただの数字でしかありません。

ダンゴの笑顔を守りたい。

 

ですが、ダンゴムシの適温は22℃〜28℃。真冬にエアコンだけで適温を保つのは難しく、やはり補助の保温器具は必要です。

一体どうやって暖めれば良いのか・・・そんな私にとある奇蟲販売店の方が教えてくださった物がこちらです。↓

 

オススメは『暖突』

暖める範囲が50cm以内ならSサイズで良いと思います。

こちらはケース上部に設置するタイプの保温器具です。

 

パッケージに『輻射型遠赤外線』と書いてあるのですが、これについて解説します。

熱の伝え方には伝導・対流・輻射の3種類があります。

伝導は物体、対流は流体、輻射は熱線(電磁波)が熱を伝えます。

 

・伝導熱の例はホットカーペット、湯たんぽなどです。

接触した部分だけ温めるのが特徴であり、パネルヒーターも主に伝導熱を利用した保温器具です。全体が上手く温まらなかったのも、それもそのはずですよね。

 

・対流熱の例は蝋燭の火、お湯などです。

空気や水が熱を帯びてそれと共に移動します。

エアコンは対流熱を利用した空調設備で空気自体を冷やしたり熱したりしています。

 

・輻射熱の例は太陽の光や石焼き芋、岩盤浴などです。

電磁波を放出し四方八方の離れた物質に熱を伝えることが特徴です。

遠赤外線は人間には見えない光であり電磁波の一つです。遠赤外線は空気と金属(表面処理されていない物)を温めることはできませんがそれ以外の物質を温めることができます。

電磁波・遠赤外線というと特別感がありますがどんな物質でも加熱すると遠赤外線を発します。パネルヒーターも弱い遠赤外線を放射しています。

 

どうやって設置するの?必要な物は?

暖突を設置するにはスチールラックが必要です。

本来は爬虫類用ゲージなど金網の屋根に取り付けることを想定した商品です。虫かごの上に取り付けるためには以下のようになります。

こんな感じです。

本来の使用方法と違って暖突とダンゴムシの間にプラスチックの蓋を挟むことになりますが、本当にこれで暖まるのかと思いますよね。

プラスチックは遠赤外線を95%吸収してしまいますが、吸収した熱をまた遠赤外線として放出します。そのためケース内のダンゴムシにも問題なく温かさが届きます。

 

スチールラックのオススメはこちら↓

安価ですが作りに何の問題もなく、高さ調節も細かくできます。スペースもちょうど良い。このラックはスチールの間隔が広いので暖突を取り付けるためには金属のワイヤーが必要でした。

キャスター付きであったり類似品がたくさんありますが、金属製で網棚でさえあれば何でも良いと思います。

 

さらに、暖突の効果を高めるためラック周囲をアルミ断熱シートで囲むのがオススメです。

アルミ断熱シートは遠赤外線を吸収せず反射するため熱を逃さず、遮光にもなり、カットもしやすくオススメです。百均でも保温グッズとしてフリーカットの物が売っていると思います。

発泡スチロールなども断熱しますが、熱に弱い素材は暖突の天面には触れないようにしてください。

 

実際どれくらい暖まるの?

実際にケース内がどれくらい暖まるのか、以下のように空の飼育ケースに温度計を入れ暖突を稼働させてみました。

アルミ断熱シートは正面のみ覆わない状態。

開始時 温度24.8℃ 湿度59%

2時間後・・・

2時間後 温度26.3℃ 湿度56%

ケース内の気温は1.5℃上がり、湿度は3%下がるという結果になりました。

しっかり効果を発揮しています。

気温を上げると空気中の飽和水蒸気量が多くなるため、相対湿度は低くなり乾燥します。

また、実際にダンゴムシ飼育ケースで使用していると部分的にうっすら結露が出ます。

冬の時期の霧吹きは多めにしてあげると良いでしょう。

 

昨年の失敗を生かして寒さ対策したおかげか、今年は冬もダンゴムシたちが元気でした♪

ご参考になりましたら幸いです。

 

【参考記事】

TRP商事株式会社『遠赤外線の特徴とは?遠赤外線に「向いている物質」「不向きな物質」を詳しく解説』

https://tpr-trading.co.jp/column/1112

Heat-tech『遠赤外線の吸収率ー遠赤外線の科学』

https://www.heat-tech.biz/products-epl/eph-gj/eph-gj-ek/1181.html

一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター『赤外・遠赤外線加熱の原理』

https://www.jeh-center.org/infrared_genri.html

サーモバリア『熱はどうやって伝わるのか?輻射(放射)熱、対流熱、伝導熱の3つの熱の種類と違いについて』

https://www.e-lifetech.com/blog/2833