ダンゴムシ情報

身近な虫の観察記録

失敗シリーズ③ダンゴムシのダニ対策

この『失敗シリーズ』ではダンゴムシ飼育をしてきた中で個人的に失敗と感じたことをテーマに記事を書いております。

私にとって良くなかった物・方法でも、それを使い上手く大切に飼われている方がいらっしゃることを存じております。

正解を示すものではなく、一つの意見としてご参考になれば幸いです。

また、商品等は本来の用途と異なる使い方をしているために失敗しているケースが多く、商品自体を貶める意図はございません。

 

一年半前ダンゴムシを飼育し始め、可愛すぎるダンゴムシを記録しようと頻繁に動画を撮影をするようになりました。ところが、そんな動画の中で小さな白い点がゆっくりと動いていることに気づきました。

そう、ダニでした。

ダンゴムシに関わらず虫の飼育で良く見かけるダニは大体コナダニかチリダニ(ヒョウヒダニ)らしいです。

ケナガコナダニと思われるダニ。ケースの壁をのんびり歩きがち。

土を扱う以上は少しのダニが居るのは仕方ないのですが、ケース外に脱出されると衛生的に良くないですし気分的にも嫌ですよね。

それに、ダンゴムシにくっついてストレスを与えたり、ダンゴムシのお腹の擬気管を塞いで呼吸の邪魔をする可能性もあります。

ダニを減らさなければ・・・と思った私が最初に購入したダニ対策グッズ、それは『ゼオライト』でした。

 

失敗ダニ対策1『ゼオライト』

ダニピタクリーン。

この「ダニピタクリーン」はカブトムシやクワガタ等のペットを想定している商品で、昆虫マットに混ぜるだけでダニを忌避し、消臭効果や汚れを吸着する効果があると書かれています。

 

原材料は主にゼオライトという多孔質の鉱物で、粒状になって入っています。

ゼオライトの細孔は水分子と大きさが近いため水分の吸着力が非常に大きく、湿気を吸収したり放出する調湿機能があるとされています。

そのため収納の湿気取りとして使われたり、農業では根腐れを防止したり保水力を高めるために土壌に混ぜられます。機能は炭と似ていますが、炭よりも非常に早く水分を吸着するらしいです。

また、アンモニアの吸着にも優れていて脱臭効果があります。

要は、調湿機能によってダニが好むベチャベチャの土にしないことでダニ忌避効果を期待する商品だと思われます。

そんなゼオライト、何が良くなかったかと言いますと…

 

失敗の理由①効果は半永久的ではない。

雨の日もあればカラカラの晴れの日もある農業のシーンでは土の中のゼオライトは半永久的に正しく機能するかもしれませんが、飼育ケースは違います。

 

ダンゴムシの飼育ケースはコバエ対策のため隙間を無くすことが絶対です。そのため、ケース内はあまり通気性が良いとは言えない状態。

土の中の余分な湿度を吸着しても、放出する機会が無ければそれ以上は吸着できませんし水分を保持し続け逆効果となってしまうことがあります。

 

そのためか、ダニピタクリーンの商品説明には「1〜2週間を目安に20g追加」と書かれています。

20gずつの追加となると無くなるのも早い。

カブトムシやクワガタなら生体を避難させてから土にゼオライトを追加することもできるでしょうが、小さな生体がいっぱいいるダンゴムシ飼育ケース内でゼオライトを追加して混ぜるのは無理があります。

 

失敗の理由②土を酸性寄りにする。

ゼオライト自体のpHが5.5〜7.5ほどの弱酸性であり、さらに細孔がアルカリイオンを吸着するため土を酸性に傾けます。

 

オカダンゴムシに限って言えば酸性の土は向きません。

オカダンゴムシはヨーロッパ原産の外来種であり、地中海沿岸の出身です。

地中海沿岸の土壌は主にテラロッサと呼ばれる石灰岩の風化によりできた土です。テラロッサはあまり水分を含まず、石灰岩から炭酸カルシウムが溶け出しアルカリ性に傾いていることが特徴です。

オカダンゴムシが日本の市街地によく生息しているのはテラロッサに似た環境を探しているためだとも言われています。

 

ですが日本の森林に生息する在来種のコシビロダンゴムシはまた違って、日本の森林に広く分布する褐色森林土は酸性寄りのため酸性を好む可能性が高いです。pHの好みもダンゴムシの種類によって違うのですね。

 

失敗の理由③粉末が擬気管の水分を奪う?

後から知ったことなのですが・・・ゼオライトの粉末にはダニを駆除する効果があり、粉末を吸い込んだダニの呼吸器を塞いだり、水分の吸着力を活かして粉末に触れたダニの体を乾燥させて駆除するという効果もあるそうです。ダニの体は80%が水分のため乾燥に弱いです。

 

粉末でダニが殺せるなら、同じく乾燥に弱いダンゴムシも危険なんじゃないのか・・・?

 

そもそも堅い体を持ったカブトムシ・クワガタのための商品です。

ダンゴムシの体も背中は堅く乾燥していますが、スポンジ状になっているお腹の擬気管は常に軽く湿っていなければならないデリケートな器官。

乾燥は厳禁です。

粉末がダンゴムシの擬気管に触れたら水分を奪って呼吸を阻害する可能性があります。

 

また、ダンゴムシは雑食で貝殻もかじりますし何を食べるか分からないところがあります。もしもゼオライトの粉末を食べてしまったら消化管内の水分を奪いお腹を悪くすることも考えられます。

 

失敗の理由④入れたらダンゴムシが死んだ。

ゼオライトをケースの土に混ぜた後、立て続けにダンゴムシの成体が2匹死にました。もしゼオライトが原因だとすれば、前述の通りゼオライトの粉末が良くなかったのかもしれません。

ですが本当に可哀想なことに飼育し始め当時は蒸れなどダンゴムシを弱らせる要因をたくさん作ってしまっていて・・・ゼオライトがダンゴムシの死と関係があるとはっきりは言えません。

ですがもう一度試す気にはなれないので、今後使うことは無いでしょう。

 

失敗ダニ対策2『ヒノキチップ』

ちゃんと密封しておかないと香りが弱くなる。

カブトムシやクワガタのダニ対策にヒノキマットを用いると知って、木は自然界にあるものだしこれならダンゴムシの負担にはならないんじゃ無いかなーと思って購入しましたが・・・

 

失敗の理由①ダンゴムシもヒノキの匂いが嫌い?

なぜヒノキがダニ対策になるのかというと、ヒノキには「テルペン」「ヒノキチオール」などの香り成分が含まれておりこれを多くの虫が嫌い、特にダニに強い効果を発揮します。

 

それってダンゴムシも嫌いなんじゃない・・・?カブト・クワガタには良いの?

 

ネットで検索すると、そもそもカブトムシとクワガタも針葉樹は好まず、ヒノキマットは弱った個体には使わない方が良いのだとか。ガーン。それなら体の小さなダンゴムシにはもっと負担が大きいかもしれません。

また、ヒノキの香り成分は2週間ほどで揮発して消えるため効果の無くなったヒノキを取り除いたり追加する必要があります。

 

ついでなのでダンゴムシが嫌う臭いを箇条書きで書いておきます。

・ハーブ全般

・ローズマリー

・酢・木酢液

・コーヒー

・ニラ

以前ふざけてダンゴムシの近くにバニラを置いたら、恐る恐る触角でチョンとタッチした瞬間『くさっ!』と言いながら逃げていきました。

これとこれがダメ、というよりは刺激臭全般が嫌いなのだと思います。

 

やっぱり湿度を見直すこと

ダンゴムシもダニも同じ土壌動物の仲間。土の中の同居人。好きな環境も嫌うものも似ています。

ダンゴムシを歓迎してダニを遠ざける環境を作ることは難しいですが、ダンゴムシとダニを分ける僅かな差はやっぱり湿度。

ダニもダンゴムシも高い湿度を好みますが、ダニは湿度60%以上を好み湿度65%以上で無ければ繁殖できないと言われています。ダンゴムシに負担がかからない程度に土の中をそれより低い湿度で維持できれば、ダニ対策になりそうです。

 

ダニ対策になる土作り

土の中の湿度を上げないためには、水捌けをよくすること。水捌けが良ければ加水のしすぎにも気づきやすく加減しやすいのではないでしょうか。

ベースは腐葉土として、ハスクチップ(ヤシの実の殻)やちぎった枯葉やサンゴ砂を混ぜると水捌けが良くなるでしょう。腐葉土が分厚く固まらないように、各素材はミルフィーユのように層にする意識で入れると良いかなと思います。

腐葉土や枯葉を外で調達する場合は天日干し(または熱湯消毒・電子レンジでチン・冷凍庫に入れる)するなどしてダニを取り除きましょう。

市販の物でも腐葉土は一度殺菌処理した方が安心です。

通気性向上にオススメ『枯葉』

硬めの枯葉をちぎって混ぜると見た目にも分かりやすく土の中に隙間を作ります。その隙間を気に入って秘密基地にしてるダンゴムシがよく見られ、本当にかわいい。

自分で拾ってきた物でも良いのですが、柔らかくて潰れやすかったりカビが生えやすいので市販品がオススメです。

排水性向上にオススメ『サンゴ砂』

粒の大きなサンゴ砂は水捌けを良くするだけでなく、土のpHをオカダンゴムシの好むアルカリ性に傾け、炭酸カルシウムなので餌になり一石三鳥なのでオススメです。

 

私は個人的に一つのケースの中で色々な土壌動物を共生させるのが好きなので多くの生物の餌になるようにとベースを腐葉土にしています。(腐葉土を過信して名前も飼い方もよく分からない虫をとりあえず放り込むことが多い。)

 

ダンゴムシだけを飼いたい場合は全て無機質の土だけで構成しても飼育可能で、それに関して研究されたみけ(Mike)さんという方がいらっしゃるので「ソイル飼育」で検索してご覧ください。無機質の土の方がダニはさらに繁殖し辛いと思います。

また、無機質の土で赤玉土や鹿沼土は多肉植物の土としてよく使われ水捌けが良いのですが、どちらもpHが酸性寄りです。もしオカダンゴムシに使いたい場合は他にアルカリ性の物を混ぜてしっかりと調整する必要がありますのでお気をつけください。

 

ダニ対策になる空気の調湿

空気の調湿について、発想の転換じゃないですがピンポイントで完璧な湿度を作ろうとするよりはケース内に湿度の差を作ってあげれば一部が多湿になりダニが湧いてもダンゴムシが好きな湿度の場所に避難することができます。

・ケース内の土に高低差を作る。

一般に高い場所ほど湿度が低く、低い場所ほど湿度が高いです。

・水苔は一箇所にまとめて置く。

・ダニが湧きづらい無機質の物を置き避難所&隠れ家にする。

この避難所として、ついでに調湿機能のある物を塊で置くのがオススメです。

これについて以下で説明します。

 

土の中に調湿効果のある物を混ぜ込んで土の湿度調整を期待するのが難しいことは前述のダニピタクリーンの件の通りですが、空気の湿度調整であれば調湿機能のある素材を塊で一つ二つ置けば良いですし交換も簡単です。

 

具体的に何を置けば良いのかですが、

ダニは湿度60%以上を好むため、湿度が60%を超えると吸水効果を発揮する物が良いですね。

とはいえダンゴムシも湿度が高い方が好きですし、湿度40%以下になると死んでしまいます。

空気中の湿度を55〜60%ほどに調湿できる素材があれば理想です。

ということで色々な素材について検索して調湿機能の資料を見た結果、以下の2つの素材は調湿機能が高いことが分かりました。シリカゲル等は除いて天然素材に絞っています。

 

・稚内珪藻頁岩(わっかないけいそうけつがん) 湿度60%前後に調湿

・活性炭 湿度50%前後に調節

 

調湿にオススメ『稚内珪藻頁岩』

珪藻土といえばコースターにバスマットに、商品として身近に売られていますよね。

ですが稚内産の珪藻頁岩はただの珪藻土では無く、調湿機能が段違いのようです。

 

稚内珪藻頁岩は比較的高めの湿度で調湿するようなのでダニ対策になるか微妙なところですがその分ダンゴムシには安全です。

湿度80%から活性化するカビや木材腐朽菌の対策にはなるでしょう。

また、悪臭の原因となるアンモニアの吸着力が非常に高いようで活性炭やゼオライトよりも優れています。総合的に見てオススメです。

稚内珪藻で検索すると、稚内珪藻石を見つけたので今回購入してみました!

商品説明はこんな感じ

「使用期限は半年〜1年」と書かれていますが、これは恐らくアンモニア吸着効果のことであり、稚内珪藻頁岩の調湿効果は半永久的に続くとされています。

 

自重に対してのアンモニア吸着率は最大14.8%。

余計に水がかからないよう、水苔から一番遠い場所に置きました。

たくさん置いたら乾燥させすぎてしまう、という物では無いため何個置いても大丈夫です。

隠れ家にオススメ『竹炭』

活性炭は確実にダニ対策にはなるけど、湿度50%前後はダンゴムシが可哀想かなっていう気がします。ただ、効果を発揮しすぎないようにケースの容量から置く量を計算することによって強い味方にはなりそうですが計算はあまり好きじゃない・・・。

 

また、同じ炭でも木炭・竹炭・備長炭は、気休め程度の調湿機能しか無いようです。

活性炭と竹炭で単純に最大吸湿量を比較すると、竹炭は活性炭の約20〜25%ほど。

木炭や備長炭と比較すると竹炭の吸湿量が一番高いですがあまり違いはありません。

 

しかしですよ・・・

「安価で、無機質で虫が湧きづらく、穏やかな吸湿効果があり下が蒸れにくく、平たい天然素材」と考えると、竹炭は単なる避難所&隠れ家としては超最適なのではないかと思います!

また、竹炭は定期的に天日干しすることによって半永久的に吸湿効果を保つそうです。(脱臭効果は半年ほどで無くなります。)

以前Amazonで竹炭1kg買ったので、これが正しいと信じるしか道は残されていない。

 

また、ゼオライトは調湿するというよりはただ水分の吸着力があるだけのようで放湿機能はほとんど無いようです。これは資料によって少しずつ違うためはっきりとは言えません。

 

毎日のケア

・加水する際にはいつも水苔にだけ霧吹きをするようにして、土に直接加水しないようにすることで土の中がベチャベチャになることを防ぐと少しダニ対策になるかと思います。

加水した水苔にダニが湧くんじゃないかと思われるかもしれませんが、マイクロスコープで見ても水苔の中にダニが居るのはあまり見ないため、湿度があっても栄養が少ない場所には居たくないのでは無いかと想像しています。

 

・前述で隠れ家としてオススメした竹炭ですが、定期的に交換して天日干しすることによって調湿効果を保ち半永久的に使えます。

 

飼育環境のリセット

どんなに最高の飼育環境を作ったとしても・・・いずれは土がヘタって状態が悪くなってきます。あまり頻繁に入れ替えるのもダンゴムシのストレスになりますが、土の入れ替えは一年に3〜4回はした方が良いと思います。ただし無機質の土だけで飼育した場合はこれより少ない頻度で済むのかなと思います。

 

以上、ダニ対策の湿度調整について出来うることを全て書きました。

ご参考になりましたら幸いです♪

 

この失敗シリーズを3記事書いてみましたが振り返ると・・・コバエシャッターに暖突にアルミ断熱シートに炭にサンゴ砂。

突き詰めると結局は他のダンゴムシ飼育者さん方がされている王道に行き着く物なのですね。

どうせなら、ちょっと個性的な考えも一つご紹介します。

 

番外編 『アヤトビムシ』

ただ『アヤトビムシが増殖したらダニが減った』としか言いようが無いのですが、先日飼育ケースの環境を作った直後に小さなダニ(恐らくコナダニ)が何匹も壁を這っているのを見かけ、嫌だなーと思いつつもとりあえず様子を見ていたのですが・・・飼育ケース内のアヤトビムシが増えてきた時から少なくなったのです。

トビムシの食性は種類によって異なり、アヤトビムシは菌糸を食べると言われていますがダンゴムシのために置いた新鮮な食べ物もガッツリ食べています。そのため、ダニの卵を食べたとしても不思議ではありません。

ただし、こうなる。

何の証拠も無いですし、群がる様子がビジュアル的に宜しくないので積極的にオススメはしませんが、アヤトビムシは壁を登ってこられる割には不思議とケース外に出ようはしないですし飛び跳ねることも少ないです。無害な虫なので居ても損は無いですね。

 

もしもトビムシがダニ・ダニの卵を食べているのを撮影したなんて方がいらっしゃったら教えていただきたいです。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

【関連記事】

だんご虫の飼育日記『だんご虫のSoil飼育のHOWTO』

https://isoport.hateblo.jp/entry/2023/12/01/080000

【参考記事】

東京寿園『ゼオライトって園芸向け?特徴やオススメの使い方を徹底解説』

https://tokyo-kotobukien.jp/blogs/magazine/15908

株式会社福地建装『その他の問題|床下に敷く調湿材について悩んでいます。』

http://www.daikyucarbon.com/su_kouka.html

ホームメイト『ダニ対策』

https://www.homemate.co.jp/useful/ondo_situdo/environment04.html

株式会社エム・イー・ティー『データ資料』

https://www.met-inc.co.jp/data.html

DAIKYU『ココヤシ床下調湿材の特徴と性能効果』

http://www.daikyucarbon.com/su_kouka.html

鈴木産業株式会社『「豊シリカ」稚内珪藻頁岩粉砕物製品ー調湿・消臭材機能素材についてー』

http://www.wakkanai-diatom-shale.co.jp/silica-v2.pdf